株式投資を始めるなら、100万円や200万円などの大金を用意するイメージがありませんか?しかし実は、数百円や数千円という少額からでも投資を始めることができます。その方法は、1株単位で取引をする「ミニ株」や、株価の低い「低位株」に投資することです。
本記事では、初心者こそ少額投資をすべき理由や、少額投資と通常の株式投資との違いなどを解説します。あわせて実際に利用できる少額投資向けの証券会社も紹介していきます。
目次
初心者が少額から株式投資を始めるべき理由
少額投資は、株式投資の初心者にこそ向いている投資法です。その理由は主に3つあります。順に説明しましょう。
1.大きな元手が必要ないから
1つ目の理由は、少額投資には大きな元手が必要ないからです。
現在上場している株の中で、最も株価の高い銘柄はファーストリテイリング【9983】。現時点での株価は、1株当たり89,130円です。通常の株式投資は、100株単位で取引するため、ファーストリテイリング株を購入しようと思うと、なんと約891万円もかかります。これは多くの個人投資家には手が出せない金額でしょう。
しかし中には数十円や数百円で購入できる銘柄もあります。仮に100円の株を100株購入した場合、必要資金は10,000円です。これなら投資初心者でも心に余裕を持って出せる金額ではないでしょうか。
投資には値動きリスクがあるので、生活にすぐに必要のない「余裕資金」で行うのが鉄則です。少額投資ならこの余裕資金の範囲内で、大きなリスクを負わずに始められるでしょう。
2.元本割れしたときのリスクを抑えられるから
2つ目の理由は、元本割れした際のリスクを抑えられるからです。
株式投資は株の値動きを利用して、資産を増やしていく投資法です。大きな利益を狙える可能性がある反面、投資した金額よりも値動きが下回る「元本割れ」が起こるリスクも存在します。
例えば、ある株が10%下落した場合、100万円購入した場合と10,000円しか購入していなかった場合とでは、当然のことながら損失額が異なります。
値下がりした割合は同じでも、投資する金額が小さいほど、お金が減少するリスクも小さくなります。少額から始めた方が、お金を失うリスクも減らせるのです。
3.株式相場に慣れることができるから
3つ目の理由は、株式相場に慣れることができるからです。
株が取引される株式相場の状況は、証券会社のマイページや外部のチャートツールなどから誰でも見ることが可能です。しかしただ見ているだけの方と、実際に取引している方とでは、投資の経験値に雲泥の差が出てきます。
ただ初めて投資をした方が、最初から利益を出せるとは限りません。そこで少額投資を活用し、損失を最小限に抑えながら株式相場に慣れていくのがおすすめです。少しずつ経験値を蓄え、徐々に大きな金額で取引していくとスムーズでしょう。
初心者が少額から株式投資する方法
少額投資の手段は、主に2種類あります。その手段の特徴について、分かりやすく説明します。
1株から購入できる「ミニ株投資」
1つ目の手段は、ミニ株投資です。株式投資は基本的に、100株や10株などの「単元株」で取引をします。この単元株未満のものをミニ株といい、1株単位や10株単位で取引が可能です。
例えば先ほどのファーストリテイリング株は、1株89,130円なので、単元株で購入すると約891万円が必要になります。しかしミニ株なら、89,130円があれば購入できるのです。
また上場企業の中には、会社の利益を株主に還元する「配当」を出す企業も多くあります。この配当は基本的に1株単位で設定されているので、ミニ株を保有していれば配当を受け取ることが可能です。
このように単元株投資のような恩恵が受けられる点も、ミニ株投資のメリットでしょう。
なお、配当に関してはこちらの記事で詳しく解説しています。あわせてご覧ください。
低予算でも買える「低位株投資」
2つ目手段は、低位株投資です。低位株とは株価の低い株を指し、数十円〜500円程度の株が対象になります。例えば現時点の低位株には、次のような銘柄があります。
・ランド【8918】(不動産業):11円
・キムラタン【8107】(アパレル業):25円
・オリエントコーポレーション【8585】(金融業):156円
・セブン銀行【8410】(金融業):262円
・三菱自動車【7211】(製造業):315円
※株価はすべて2021年3月30日の終値
セブン銀行株を100株購入した場合、必要な資金は26,200円です。このように、セブン銀行や三菱自動車などよく見聞きする企業も、手頃な株価で取引できるのが、低位株のメリットです。ただし、低位株を取引する際には、2つ注意点があります。
まず、上場廃止予定の銘柄を購入しないこと。すでに上場廃止が決まっている銘柄は安く買いたたかれやすく、最終的には0円の価値になってしまうケースも多いです。
あえて上場廃止銘柄で取引して利益を出す投資家もいますが、初心者にはハードルが高いので、触れない方が無難でしょう。
次に、時価総額がある程度大きな銘柄を購入すること。時価総額は、株価×発行済株式数で計算できます。時価総額が小さいと、値動きが乱高下しやすくなるのでおすすめできません。
以上2点に注意して、取引するのがおすすめです。
少額投資の注意点
小資金で投資できる便利な少額投資ですが、デメリットもいくつか存在します。知っておきたいデメリットを2つ紹介しますので、取引前に確認してみてください。
損失は少ないが、利益も少ない
1つ目のデメリットは、利益が少ないことです。少額投資はどんなに値動きがあっても、損失を小さく抑えられます。しかし大きく値上がりしたときの利益も少ないので、大きな利益がほしい方は満足しにくいです。
その場合は、通常の株式投資で数百円〜数千円の株式をトレードし、大きなリターンを狙うといいでしょう。
ミニ株投資には制約が多い
2つ目のデメリットは制約が多いことです。ミニ株投資と低位株投資を比較した際、ミニ株投資には多くの条件や制約があります。
ミニ株投資と低位株を含めた通常の株式投資を比較し、双方の特徴をまとめました。
【ミニ株投資・通常の株式投資の比較】 | ||
---|---|---|
取引方法 | ミニ株投資 | 通常の株式投資 |
基本の最低取引株数 | 1株〜 | 100株〜 |
取扱銘柄数 | 限定的 | 豊富 |
取引手数料 | 通常の株式投資より割高 | 0円〜数百円 |
約定する株価 | その日の終値など、リアルタイム株価ではない | リアルタイムの株価 |
IPO株の取扱い | 限定的 | あり |
配当、株主優待 | あり(株主優待は対象外多数) | あり |
まず取引できる基本の最低株数は、ミニ株投資が1株〜、通常の株式投資が100株〜です。取扱銘柄数については、ミニ株はまだ限定的で、主要な銘柄を中心に取り扱っている状況。一方の通常の株式投資は、上場株なら基本的にすべて取引可能です。
株式投資には取引する際に手数料がかかりますが、この手数料は比較的ミニ株投資の方が高めに設定されています。また株の売り買いが決まることを「約定する」といいますが、この約定する株価も、ミニ株はリアルタイム株価ではないケースが多いです。さらに新規上場する「IPO株」の取扱いも、ミニ株では限定的となります。
このように何かと制約の多いミニ株投資ですが、どんなに株価の高い銘柄でも、1株から取引できる点は大きなメリットです。双方のメリット・デメリットを踏まえ、利用する手段を選ぶといいでしょう。
【試算】株初心者が少額投資したらいくら儲かる?
では実際に少額投資を行った場合、どれくらいの利益が見込めるのでしょうか?
株価300円、年間配当5円の株式Aを100株購入し、5年間保有した際のシミュレーションを行いました。
【少額投資シミュレーション】
(株式Aの条件)
・株価:300円
・年間配当:1株当たり5円
・購入株数:100株
・年間5%ずつ値上がりしたとする
すると、実際に配当で増えていく金額や割合は次のようになります。
経過時間 | 株式Aの価値 | 配当 | 投資開始時点からの利益(円) | 投資開始時点からの利益(%) |
---|---|---|---|---|
投資開始時点 | 30,000円 | - | - | 0 |
1年後 | 31,500円 | 500円 | +2,000円 | +6.6% |
2年後 | 33,075円 | 500円 | +3,575円 | +11.9% |
3年後 | 34,728円 | 500円 | +5,228円 | +17.42% |
4年後 | 36,464円 | 500円 | +6,964円 | +23.21% |
5年後 | 38,287円 | 500円 | +8,787円 | +29.29% |
これは30,000円での試算ですが、もし10倍の金額を投資していたら利益額は88,000円近くに、100倍の金額なら88万円の利益が上がる計算になります。
ただし最初から多額の投資をするのはリスクが大きいので、まずは数万円程度から投資を始めるのがおすすめです。
1万円未満から投資できるおすすめ証券会社
では実際に少額投資ができる証券会社を紹介していきましょう。今回はミニ株投資ができる証券会社・サービスを3つ紹介します。
LINE証券
LINE証券は、スマホの「LINEアプリ」から投資ができる証券会社です。多くの証券会社ではパソコンのマイページや専用アプリから取引を行いますが、LINE証券はLINEがあればいいので、手軽に投資が楽しめます。またLINEポイントやLINE Payが使えるのも便利です。
LINE証券の特徴は2つ。まず、1株から取引できる「いちかぶ」を取り扱っている点です。その銘柄数はなんと1,000以上。有名企業の株から最近上場したニューフェイスまで、あらゆる株を売り買いできます。
また通常の株式取引(現物取引)や、レバレッジが使える「信用取引」も可能なので、まずはいちかぶから始め、慣れたら通常の株式投資に移行するのも可能です。
次に、買付手数料がない点です。多くの証券会社では買付で売却でそれぞれ手数料を設定していますが、LINE証券では買付手数料はゼロで、売却時のみ手数料(スプレッド)が0.2〜1.0%かかります。0.2%で取引時間帯を狙うといいでしょう。
LINE証券では「口座開設後に無料で株が3株もらえる」など、さまざまなキャンペーンを随時実施中。公式サイトで最新情報をチェックしてみてください。
最低取引単位 | 1株〜 |
売買時の手数料 | 買付:無料 売却:0.2%〜1.0% |
特徴 | ・LINEアプリで取引できる ・LINEポイントやLINE Payと連携 ・通常の株式投資も可能 ・キャンペーンが多い |
PayPay証券
PayPay証券は、1株単位ではなく「1,000円単位」で投資ができる証券会社です。旧サービス名は「ワンタップバイ」でしたが、2021年2月に社名変更・サービス名変更が行われました。金額指定で取引できるサービスは非常に珍しく、独自の存在感を発揮しています。
PayPay証券の特徴は、2つ挙げられます。1つはスマホでの取引操作が非常に簡単な点。買いたい株を選び、金額を決めたら、すぐに買い付けられます。株の値動きがわかるチャートが表示されないので、迷わず買えてしまうのもメリットと言えるかもしれません。
もう1つは、米国株も購入できること。ミニ株投資サービスの多くは日本株のみ取り扱われていますが、PayPay証券では米国株も取引できます。今人気の米国株投資に少額からチャレンジできるのは大きなメリットでしょう。
1,000円単位で気軽に投資したい方、米国株投資に興味のある方に向いている証券会社です。
最低取引単位 | 1,000円〜 |
売買時の手数料 | 0.5%〜1.0% |
特徴 | ・1,000円単位で取引できる ・アプリ操作が簡単 ・米国株の少額投資が可能 |
ネオモバ
ネオモバ(SBIネオモバイル証券)は、スマホアプリから1株単位で気軽に投資できる証券会社です。その特徴は2つ挙げられます。
1つ目は、Tポイントを使って株が買えること。ネオモバは取引手数料ではなく、月額220円(税込)のサービス手数料を支払います。その代わり毎月Tポイントが200ポイントもらえるので、このポイントを使って投資が可能です。
さらに自分で貯めたTポイントも利用できるので、多くのTポイントを持っている方は実質無料で株が買えるでしょう。
2つ目は、IPO株も取引できる点です。IPO株は通常の株式投資でも抽選制のため、誰もが上場とともに購入できるわけではありません。ネオモバでもIPO株は抽選制ですが、人気のIPO株を1株から買うチャンスがあるだけでも、特筆すべきメリットです。
Tポイント投資やIPO株投資にチャレンジしたい方は、ネオモバで口座開設するといいでしょう。
最低取引単位 | 1株〜 |
月額手数料 | 220円(税込)〜 |
特徴 | ・1株から投資できる ・Tポイントを使って株が買える ・IPO株にも投資可能 |
低リスクの少額投資から始めて、株取引を学ぼう
投資初心者は、少額から気軽に始められる少額投資がおすすめです。大きな資金を投資する必要がない点、値下がりした際の損失を極力抑えられる点が大きなメリットといえます。
投資は相場の中で経験を積むことが大切。ミニ株や低位株の中から気にある銘柄を選び、買い付けてみるといいでしょう。さっそくお好きな証券会社で口座開設し、個人投資家としてのスタートを切ってはいかがでしょうか。