「eスポーツ(e-sports)」業界の活発化に加え、ゲーム配信を行う「ストリーマー(配信者)」や「VTuber」の人気も高まり、そこでプレイされているゲームを遊んでみたいと思う層も少なくはないでしょう。
ネット回線なしで遊ぶことのできるゲームもありますが、中にはインターネットを通じて対戦したり、協力プレイを行うものもあります。
そして、ジャンルによってはネット回線の良し悪しが勝敗を左右してしまうものさえあり、より上手くなりたい・もしくは快適に楽しみたいのであれば、ネット回線は慎重に選ぶ必要があります。
本記事ではゲーム向けのネット回線選びに必要な情報から注意点、そしておすすめのサービスを紹介していきます。
目次
ゲームで求められるネット回線のポイントは?
オンラインゲームでは頻繁に通信が行われ、また多くのデータ量がやり取りされます。
単純に「通信速度が速いものを選べば良い」というわけではなく、通信が安定しているかといったことも重要です。
そのため、ゲーム向けのネット回線を選ぶ際には次の3点を必ずチェックするようにしてください。
- 通信速度の実測値
- Ping値(ピン値またはピング値)
- 接続方式(IPv4のみか、IPv6対応か)
それでは、上記3点について詳しく解説していきます。
上がり・下がりの通信速度は平均値をチェック
ネット回線の通信速度にはそれぞれ「上がり(アップロード)」と「下がり(ダウンロード)」の2つの速度が表記されています。
今は光回線が主流となっており、サービスのほとんどで「上がり最大通信速度1Gbps」などと記載されていると思いますが、実際にこの速度が出るわけではありません。
まず、サービスは基本的に「ベストエフォート型」となっており、最大通信速度はあくまで理論値となります。
インターネット回線は独占して使えるものではなく、さまざまな人と共有して使用するものです。
多くの人が使用している時間帯は多少通信速度が落ち、逆にそうではない時間であれば、通信速度のパフォーマンスが一気に良くなることもあります。
そのため、通信速度は「最大」ではなく「平均」がどれくらいかを知っておく必要があります。
可能であれば実測値をチェックしておきたいところですが、これは実際に契約してから測るしかなく、地域によって変わることもあるため、判断材料としては難しいでしょう。
実際に平均値としてはどれくらいなのか、光回線にも種類がありますが、下記のように異なっています。
- フレッツ光系:250Mbps~300Mbps
- 光コラボ系:事業者によって異なるが200Mbps前後が多い
- 独自回線系:400Mbps~500Mbps
- 電力会社系:300Mbps~500Mbps
速度のみを考えれば「独自回線系」か「電力会社系」の光回線を使用するのが良いかもしれません。
ただ、それぞれメリットとデメリットがありますので、そちらは後ほど詳しく解説していきます。
このように、「最大通信速度」で使用できるわけではなく、平均値の速度で利用することになると理解しておいてください。
応答速度「Ping値」はなるべく低いものを
リアルタイムで頻繁に通信が行われるゲームにおいては、応答速度の「Ping値」も重要となってきます。
通信速度はデータ量のやり取りを示すものに対し、Ping値はそのやり取りを行う際にどれだけ早く反応されるか(レイテンシ)を数値化したものになります。
Ping値は「ms(マイクロ秒)」で表され、低ければ低いほど、すぐに応答してくれるということになります。
非常に小さな単位であるため、そこまで大きく変わらないように思うかもしれませんが、体感では大きな差を感じます。
例えば、最短の10msだと入力した内容がほぼダイレクトに伝わりますが、50msともなると動作がもたついて違和感を強く感じるでしょう。
Ping値も通信速度のように一定となるわけではありませんが、大きくブレるような不安定な回線を使うことは避けた方が良いかもしれません。
オンラインゲームにおいては30ms以下が快適にプレイできるとされており、FPSや格闘ゲームなど特に瞬間的な入力が勝敗を分けるようなものをプレイするのであれば、Ping値が10ms前後で安定している回線を選ぶようにしましょう。
IPv6通信が基本契約に含まれているか
インターネットの通信規格には「IPv4」と「IPv6」の2つが存在し、違いとしては、通信の混雑が起きやすいかどうかという点になります。
「IPv4」は1990年代から使用されているもので、インターネットの普及に伴って生じたデメリットを解消して混雑しにくくなったものが次世代バージョンの「IPv6」であると覚えておいてください。
IPv6での通信だと通信が混雑することを避けられるため、より安定した環境でゲームができるようになります。
現在はIPv4からIPv6への移行期間であり、通信事業者によっては対応していなかったり、別途追加の契約が必要になったりすることもあります。
追加契約の場合はさらに料金がかかることになるため、基本的な契約でIPv6を用いた通信が可能かどうかは確認しておきましょう。
光回線の種類ごとのメリットとデメリット
ここで、光回線の種類について解説しておきます。
先述した通り、光回線は主に「フレッツ光系」「光コラボ系」「独自回線系」「電力会社系」の4つに分類されます。
速度による違いのほか、費用や利用できる地域などにメリット・デメリットがあるため、理解したうえで選ぶようにしましょう。
フレッツ光系回線のメリットとデメリット
「フレッツ光」は日本最大の電話通信会社「NTT」が提供する、自社の光回線網を用いたブロードバンドサービスになります。
比較的早い通信速度と、大手企業が運営していることによる安心感があることなどに加え、全国どの地域でも利用することができるというメリットがあります。
難点としては、NTTとの契約に加え、フレッツ光を接続してくれる「プロバイダー」との契約も必要になることです。
この場合、回線契約に加えてプロバイダーとの契約という2つの契約を取り交わすことになるため、月額料金では全種類の中で最も高くなります。
また、トラブルが起きた際にもどちらに問い合わせれば良いのかわからず、結果的に解決まで多くの時間がかかってしまうというリスクもあります。
後述する独自回線系や電力会社系を利用できず、費用が高くても高速で安定した通信環境がほしいという場合にはフレッツ光の利用を検討するのも良いと思われます。
光コラボ系回線のメリットとデメリット
「光コラボ(光コラボレーション)」と呼ばれる回線は、さまざまな通信事業者がNTTの「フレッツ光」を自社商品やサービスと合わせて販売されるものになります。
例として「ドコモ」や「ソフトバンク」、「楽天」などの有名大手企業が提供しています。
メリットとしては、顧客獲得のために値段がフレッツ光よりも安かったり、キャッシュバックなどの特典をもらえたりすることがあるという点です。
携帯電話のキャリアに関するコラボであれば、ネット回線も契約することで月々の金額が割引されたりということもあるので、さらにお得になります。
デメリットとしてはフレッツ光よりも通信速度は遅くなり、提供事業者ごとにも平均速度は異なってきます。
速度が早い事業者と遅い事業者で比較すると、100Mbpsほどの差が出ることもあるため、値段だけを見て契約するというのは非常に危険です。
そこまで速度を重視しておらず、また契約しているスマホのキャリアやその他サービスとの兼ね合いで費用を抑えることができるといった場合にはちょうど良いかもしれません。
独自回線系のメリットとデメリット
「独自回線系」はその名の通り、提供事業者が自身で管理・所有している回線を提供するサービスになります。
2022年8月現在では「NURO光」「auひかり」の2サービスが該当しています。
フレッツ光や光コラボはすべてNTTの回線を用いているため、利用者数の多さなどから平均で250~300Mbps程度の通信速度になっていますが、独自回線ではその回線を契約した人たちだけで使用する専用のものであるため、平均400~500Mbpsという速度を誇っています。
そのため、通信速度だけで言えば、独自回線系が最も速いサービスとなっています。
ただ、独自回線系サービスは利用できる地域が限られています。
例えば「NURO光」の場合、東北や四国などの地域では利用することができません。
順次提供エリアが拡大されていくことは今後も続くでしょうが、自分が住んでいる地域で利用できるようになるまでは他の回線を使うしかありません。
そして、初期から導入されている建物も少ないため、開通工事に時間がかかるというのもデメリットのひとつでしょう。
ネット回線のパフォーマンスとしては最も良いものの、住んでいる地域によって利用が限られてしまうため、もし使えるのだったらラッキーだと思っておきましょう。
電力会社系回線のメリットとデメリット
電力会社系のネット回線とは、各地方の電力会社におけるグループ会社が提供しているサービスを指します。
例えば、関西電力管轄内であれば「eo光」、四国電力管轄内には「Pikara光」という光回線サービスが存在します。
電力会社系のメリットとしては、まず、独自回線と同レベルの通信速度で利用できるという点があります。
電力会社系の回線もフレッツ光とは独立した回線であるため、同等のパフォーマンスになっています。
また、電気やガス、電話などとまとめることで料金がお得になったり、動画配信サービスなど連携しているものを割引で契約できたりと、さまざまなオプションも利用できるようになります。
デメリットとしては、各地方の電力会社で提供されるサービスであるため、独自回線よりもさらに提供エリアが狭いことがあります。
現在では、5つのサービスが下記の通り提供されています。
- eo光:大阪府、京都府、兵庫県、奈良県、滋賀県、和歌山県、福井県の一部地域
- コミュファ光:愛知県、静岡県、岐阜県、三重県、長野県の一部地域
- MEGA EGG: 広島県、岡山県、山口県、島根県、鳥取県
- Pikara光 :香川県、愛媛県、徳島県、高知県
- BBIQ :福岡県、長崎県、佐賀県、熊本県、大分県、宮崎県、鹿児島県
そして、その地方から離れた場合は解約するしかなく、改めて引っ越した先でネット回線を契約しなければいけないという手間もかかってきます。
提供エリアに住んでいるのであれば、デメリットとしては引っ越す際の解約が手間になるという程度ですので、回線の質・コスパを考えれば最も利用したいサービスのひとつです。
ゲームごとに必要な回線速度・Ping値の目安一覧
これまでは「ファイナルファンタジー14(FINAL FANTASY 14)」のような「MMORPG」が主流でしたが、「ストリートファイター」などの格闘ゲーム、「APEX Legends」や「Valorant」などのFPS、「マインクラフト(Minecraft)」などのサンドボックスゲームというように、オンラインで遊ぶことのできるゲームのジャンルは多岐に渡ります。
特に格闘ゲームやFPSは非常に短い間に操作することがあるため、回線の遅さで負けてしまうということも少なくありません。
そして、描画される頻度も多いことから、回線が遅いとラグが頻発したり、フリーズしてしまったりとプレイの快適さにも影響してきます。
そのため、ネット回線を選ぶ際には、遊びたいゲームジャンルに合ったものを選ぶ必要があります。
下記はそれぞれのジャンルで重要視しておきたい点と、推奨される回線速度・Ping値を一覧にしたものです。
ゲームジャンル | 通信速度 | 推奨ping値 |
FPS・TPS | 70Mbps以上 | 10~15ms |
格闘ゲーム | 30Mbps以上 | 10~20ms |
MMORPG、MORPG | 30Mbps以上 | 50ms |
実際のところ、通信速度はどのオンラインゲームでも最低30Mbps以上あれば、ある程度快適に遊ぶことができます。
FPSやTPSなどは通信量も多くなることから多少高めの通信速度を求められますが、光回線であれば問題が出ることはないでしょう。
重要なのは「Ping値」であり、反射的に反応することが必要なゲームジャンルほど、低いPing値が求められるということは覚えておいてください。
ポケットWiFiやホームルーターでもゲームは可能?
ネット回線の契約が手間だったり、短期間住むという理由から携帯キャリアのホームルーターやポケットWifiで済まそうという人もいるかもしれません。
ただ、やはりゲームには不向きの回線になります。
通信速度自体はなんとかプレイできるのですが、ホームルーターやポケットWifiはSIMカードを指して利用するものであるため、数日間もしくは月内の利用状況によって通信制限がかかることがあります。
ゲームのアップデートで大量のデータをダウンロードしなければいけないこともあるため、通信制限にかかりやすく、プレイにも支障が出てきます。
また、Ping値も50ms~80msほどと高いうえに安定しにくく、FPSなどのゲームをプレイすることは基本的に難しいでしょう。
MMORPGなど、ゆっくりとしたゲームであれば遊べるかもしれませんが、通信制限によって描画が荒くなったり、ラグが頻発したりということもあるので、オンラインゲームを遊ぶことを中心に回線を選ぶ際には、ホームルーターやポケットWifiの使用はおすすめできません。
光回線なのに遅い!利用時の注意点
光回線を契約したのに体感として遅く感じることもあるかもしれません。
オンラインゲームでは顕著に通信の遅さや安定しないことがストレスに感じるため、このような状況の場合は何に注意するべきか、参考として解説しておきます。
機器が古いせいでパフォーマンスを発揮できていない
回線自体には問題がなくても、ルーターやモデム(ONU)などの回線から通信を介する機器が古いために通信が遅くなっていることもあります。
モデムはプロバイダーからのレンタルとなることも多いと思われますので、もし長い間取り替えていないという状況であれば、確認してみると良いかもしれません。
スマホやタブレットでWifiを使うためにルーターを通している場合には、新しいものに取り替えてみるなどしてみましょう。
無線接続のせいでラグが生じる、速度が出ない
ゲーム機のインターネット接続を無線で行っているために通信が遅い・安定しないということもあります。
基本的には安定させるために有線接続するのがベストなのですが、Nintendo Switch Lightなどの携帯機をインターネット接続する場合はそうもいきませんので、ルーターの位置などを調整する必要があります。
無線接続は距離が離れたり、間に障害物があると安定しなくなります。
その場合は中継器を置いたり、Wifiルーターが物陰にあれば外に出してみたりすると改善できる可能性が高いです。
マンションタイプなど共有しているせいで重たいことがある
マンションタイプのネット回線は他の部屋に住んでいる人と共有している形であるために、時間帯によって重くなってしまうことはあります。
もしくは光回線契約であっても、建物が古いために、各部屋への回線は光ファイバーケーブルではないという可能性もあります。
この場合は混雑する時間を避けるか、別途個別に契約するほかありません。
ただ、個別で契約する場合は開通工事が必要になるため、大家もしくは管理会社に確認する必要があります。
また、回線の利用料も上がることになるので、コストと相談して考えるようにしましょう。
おすすめのゲーム回線3社
オンラインゲーム向けのネット回線としておすすめなのは、「NURO光」「GMOとくとくBB」「So-net光」の3つになります。
このほか、上述した地方電力会社系のネット回線もおすすめですが、利用できるのが特に限定的となってしまうため、今回はある程度の全国を対象にしたサービスをピックアップしました。
最高水準のパフォーマンスで非常に快適!「NURO光」
「NURO光」は平均的に400~500Mbpsの通信速度で、低Ping値も実現できている光回線として非常に優秀なサービスとなっています。
前述した独自回線系のサービスであるため、常に快適に利用することができます。
基本料金は5,200円と比較的安いことに加え、初年度は1年間990円で利用できたり、キャッシュバックキャンペーンも行われていたりとお得な点も多いです。
さらに新規契約者であれば、PS5を同時購入して契約できるといったゲーマー向けのキャンペーンが開催されていることもあります。
ただ、開通工事には時間がかかることが多いとされており、余裕を持っての契約を行うようにしましょう。
安心の運営元でコラボも多数!「GMOとくとくBB」
20年の運営実績を持つ大手企業の光回線サービス「GMOとくとくBB」はコスパの良さからおすすめです。
モデムや通信料すべてまとめた状態で月額3,773円と、業界トップクラスの価格であり、さらにIPv6にも対応したWifiルーターも無料でついてきます。
さらに、ドコモ光などの光コラボに切り替えることも可能で、自身の使用している携帯キャリアに合わせて調整しやすいというメリットもあります。
全国対応かつ通信速度も申し分ないため、一人暮らしの人などにはぴったりかもしれません。
全国で利用可能!オプションも豊富な「So-net光」
「So-net光」では、U-NEXTなどの動画配信サービスとのセットや、開通までの1か月間に無料でポケットWifiを貸し出してくれるなどのオプションサービスが豊富となっています。
また、「auひかり」とのコラボもあり、auスマートバリューの対象にもなるので、auユーザーであれば検討しておきたいネット回線になります。
運営元も「ソニーネットワークコミュニケーションズ」と大手であるため、安心感も高いでしょう。
動画配信サービスを利用していたり、初めてのネット回線契約である場合には選択肢に入れておきたいひとつです。
ネット回線選びは入念に!ゲーム利用も踏まえて考えよう
現代ではリモートワークの普及や、接続する端末数の増加などで、既存のネット回線ではスペックとして足りないといった状況になることもあります。
今後インターネットを介してのデータのやり取りを頻繁に行う可能性のある人にも、ゲーム向けの回線はおすすめできます。
そのため、ある程度高いパフォーマンスを発揮できる回線と契約しておくと困ることにはならないと思われます。
もし古い回線を使い続けているなどといった場合には、一度見直してみても良いのではないでしょうか。